大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(う)1122号 判決

原判決が、被告人柳川繁久から追徴することとした金五万八千四百円が、原判示第二の同被告人が饗応を受けた金一万三千九百円と原判示第三の二の同被告人が供与を受けた金一万円と原判示第三の三の同被告人が被告人吉松務と共謀して供与を受けた金六万九千円の半額を合算したものであること、及び被告人吉松務から追徴することとした金四万八千四百円が、原判示第二の同被告人が饗応を受けた金一万三千九百円と原判示第三の三の同被告人が被告人柳川繁久と共謀して供与を受けた金六万九千円の半額を合算したものであることはいずれも論旨の指摘するとおりである。

しかし、原判示第三の三の被告人等両名が共謀して飯泉春雄から賄賂として供与を受けた金円が金六万九千円であることは、原判決が挙示引用した証拠により、十分にこれを肯認することができ、本件訴訟記録及び原裁判所が取り調べた証拠を精査しても、原判決の右認定には事実誤認の疑はなく、又論理の法則乃至経験則に違背した違法もない。ところで、数人が共謀して収受した賄賂の没収又は追徴については、各自が現に享受した利益に従つてこれを行うことが相当であることは論旨の指摘するとおりであるが、このことは各自が現に享受した利益が分明しているときにはじめてなし得ることであるから、それが分明しない場合には、平等に分割してこれを各自に負担させることとするほかはないものと解さざるを得ない。

そこで、本件についてみるに、本件訴訟記録及び原裁判所が取り調べた証拠によれば、被告人等は飯泉春雄と共に新橋辺のキヤバレー等二、三軒で飲酒し相当酩酊の上、五反田に向う自動車の中で被告人吉松務が飯泉春雄から前記の金六万九千円を受け取り、更に五反田辺のキヤバレー等数軒で飲酒し、なお被告人吉松務は飯泉春雄と共に五反田辺の旅館で一泊し、五反田辺のキヤバレー等の支払や旅館の支払等のために、被告人吉松務が飯泉春雄から受け取つた右金六万九千円の大半を費消したが、被告人等及び飯泉春雄がいずれも相当酩酊していたため、五反田に行つてからの被告人等の行き先及び金銭の支払状況を明確にすることができなかつたことが明らかであり、且つ右のような事情のもとにおいてはこれを明確にすることはとうてい期待することができないものと思われるから、被告人吉松務が飯泉春雄と共に一泊した五反田辺の旅館の宿泊料を明確するに由なく、又被告人吉松務がその後スキーに行つて費消したという金二千円については、本件訴訟記録及び原審裁判所が取り調べた証拠を精査しても、これを同被告人が飯泉春雄から受け取つた金六万九千円のうちから、支出したことを確認するに足りる証拠がなく、且つ前記のように右金六万九千円のうちから、被告人が五反田辺で費消した残額が何程であつたかさえ判然としないような事情にある本件においては、右金二千円を、被告人吉松務が、果して右金六万九千円の残額の中から支出したか、或は同被告人の所持金の中から支出したかを確定する由もなく、結局被告人等が共謀して収賄した右金六万九千円については、各自が現に享受した利益を明確にするに足りる証拠もなく、又その方法もないことに帰するから、これを平等に分割して追徴することとした原判決は相当であつて、これを非難することは当らない。

次に、原判示第二の被告人等両名が、竹森勝次郎及び横山徳次郎の両名から饗応を受けた価額が、一人前合計金一万三千九百円位に相当することは、原判決が挙示引用した証拠によつて必ずしもこれを認められないわけではない。従つて、論旨はいずれも理由がない。

同第二点について。

本件訴訟記録を調査するに、原審第七回公判調書によれば、右公判期日の公判廷において、検察官が、原審相被告人高橋定義の司法警察員に対する供述調書四通及び検察官に対する供述調書二通の証拠調を申請したが、その際右各供述調書の作成年月日及び回数等を明示しなかつたことは論旨の指摘するとおりであるが、右公判調書によれば、被告人等及び弁護人等が、検察官の右証拠調の申請に対して異議を述べず、且つ右各供述調書を証拠とすることに同意したので、原審裁判官はこれを証拠として取り調べる旨を決定し、検察官がこれを朗読して原審裁判所に提出したことが明らかであり、且つ、右公判調書の次には、右高橋定義の司法警察員に対する第二回、第五回、第六回及び第七回各供述調書並びに検察官に対する第三回及び第二回各供述調書が順次に編綴してあるが、右の事実に徴すれば、結局、検察官は原審第七回公判期日の公判廷において、右各供述調書の証拠調を申請し、被告人等及び弁護人等が、これに異議を述べず、且つ、これを証拠とすることに同意したので、原審裁判官が右各供述調書を適式に証拠調したものと認むべく、従つて、原審裁判官が原審相被告人高橋定義の司法警察員に対する第七回供述調書を証拠に採用したことは相当であつて、これを非難することは当らないから、論旨は理由がない。

(註 本件は量刑不当により破棄自判)

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